第四夜 鳥籠


 少年はよく、父親の肋骨の中に入って遊んだ。
 彼の父親は骸骨で、その籠のような肋骨は、彼ほどの子供がもぐり込むのにちょうどよい大きさだった。
 父のひざの上に這い上がり、その肋骨に滑り込んで、骨の間から外を覗いてみる。
 すると、なんだか小さな部屋に隠れているような、妙にくすぐったいような気持ちになり、くつくつと笑いがこみ上げてくるのだった。

 だが父親は、息子がそうやって自分の肋骨に入るたびに、泣きたいような、狂おしい感情にとらわれるのだ。
 自分の行いの、何と罪深いことか。
 日のもとにいるべき人の子を、こんな地の底に閉じ込めて。
 だが、このいとおしい息子を手放すなど、いまさらできない相談だった。
 自分は、この肋骨は、紛れもない、この子の檻なのだ。

 ―ねえねえ父さん、鳥籠みたいだね。
 骨の間から見上げる、息子の笑顔。
 ―ああ、そうだな。
 心の中を押し隠しつつ、父は子の頭をなで、その硬い腕で抱きしめる。
 このひざの上の小さな重さが、冷たい肋骨の中の温もりが、叶うことなら永遠に続けばいいと願いながら。
 そして息子は、この父親を、このひざの上のこの場所を、何よりも、心から愛していたのだった。


END


BACK          TOP