第五夜 銀の子


 漆黒の闇の中にいながらなぜ人の子は色が薄くなるのだろう、と、魔物たちはいぶかしむ。
 透けるように白い肌、まじりけのない銀の髪、紫水晶のような瞳。
 地の底の常夜の世界の中で、彼の姿はまるでぼうっと銀に光っているように見えるのだった。

 遊び仲間の竜の背に乗って、彼は地底魔城の、その深い闇の中を飛び回る。
 彼らのはしゃぐ声に、何事かと部屋を出て宙を見上げた魔物たちは、互いにささやきあうのだ。
 ―何だろう、あの、銀色のは。
 ―ああ、ほら、あの子だよ。あの、人間の子。
 ―綺麗なもんだ。まるで……

 ―まるで、月みたいだよ。
 ―こんな地の底に、月が出るなんてね。ははは……


END


BACK          TOP